DOG / INTERVIEW / RESCUEAug 31, 2015

関 康弘さん・有美さんとココ、貯蔵

INU TO NEKO TOにも登場したことのある柴犬のココちゃんは、2013年の年末に飼育放棄で殺処分される直前、動物保護団体に保護されました。その後、小林さんのお宅で過ごしながら里親探しをすること約1年、今年の春に14歳のココちゃんを家族として迎え入れたいという申し出があり、同時にその朗報は保護犬の貯蔵ちゃんにも届いたのです。2匹の新たな家族となった関さんに、その心境と、保護犬を引き取ることについて伺いながら、ココちゃんの近況報告とともにお届けします。


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飼育放棄されたココと、もと放浪犬の貯蔵

──以前にも増してココちゃんの表情が明るくなったような気がします。最近のココちゃんはどんな様子ですか?

ココはうちに来てからどんどん若返っているというか、幼くなっている気がします。バンダナを振り回すとじゃれてきたり、自分から遊んでって近寄ってくることもある。年齢も14歳と言われていますが、なんだかもう少し若い感じがしますね。

──ココちゃんの里親が決まったという知らせは私も耳にしていたのですが、同時期にもう1匹、合計2匹の犬を保護団体から引き取られたと知って驚きました。

そうなんですよ。そのもう1匹というのは貯蔵(ちょぞう)という名前の柴犬。外を放浪しているところを保護され、収容されて一年間保護センターにいた、推定9歳のオスなんです。

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──同時に2匹を引き取られたのにはどういった経緯があったのですか?

今年3月の終わりころ、動物保護団体ランコントレ・ミグノンの譲渡会に、家族で行ったのがきっかけです。ミグノンのWEBサイトを見て、気になる犬がいたので会いにいったんですが、結局その子はまだ警戒心も強く、人慣れしていない子だったのでスタッフさんからも「子どもがいる家庭には難しいかもしれない」とアドバイスされ、断念したんです。

──それで他の犬も見てみようと。

見渡してみたら、奥の方に人懐こくて、ぽわんとしてる貯蔵がいて。やさしそうな雰囲気の貯蔵を見てたら「この子だったら飼ってもいいな」と思えたんです。それで、ココもその場にいたらしいんですが、実は私、全然気づかなくて(笑)。娘がいつの間にか見つけてて、もうその時には「この子がいい。この子を飼いたい!」って言ってましたね。

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──すぐに2匹を飼うことに決めたんですか?

いえ、一度その場を後にしました。動物を飼う上で、可愛いからとか、情に流されて決めてしまうのは人間にとっても、犬にとっても良くないですからね。それで、お昼ご飯を食べながら冷静によく話し合った結果、一番慎重だった夫も、ココと貯蔵ならいいんじゃないかと言ってくれまして。それで、他の人が名乗り出ないうちにと急いで譲渡会に戻ったんです。もしまだあの2匹が残っていたら飼うことにしようって……。

──それで再びミグノンに戻ったのですね。中型犬を、しかも2匹同時に引き取るケースは少ないと思います。決め手は何だったのですか?

ココと貯蔵の性格・雰囲気だったら、2匹一緒に飼えるだろうと思えたから。でも、もともとは、犬を飼うなら1匹だけのつもりだったんです。というのも、去年までうちには長年一緒に暮らしていた柴MIXと、甲斐MIXの2匹の犬がいて。多頭飼育だと犬同士の相性や、世話の面で簡単ではないことを知っていので。

それに2匹を亡くした喪失感があまりにも大きかったので、新たに飼うとしても今までとは違うスタイルにしようと思っていたんです。犬種や性別、頭数も。でも結局、楽しかった思い出のほうが勝ってしまいましたね。

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※昨年看取った2匹。柴MIXの凡ちゃん(17歳/メス)と甲斐MIXのムーチョちゃん(14歳/メス)。


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保護犬は年齢ではなくフィーリング

──飼いたい犬の条件はあったのでしょうか。

家族のライフスタイルを考えると、子犬からしつけをしてあげることはできないので、成犬が良かったんです。仕事もあるのでずっと家に居られないし、子供たちも成長していきますから。それと飼うなら“行く先のない子から”というのは漠然とありましたね。特定の犬種へのこだわりもないので、ペットショップやブリーダーから買うという選択はもともとなく、強いて言うなら日本犬や雑種かな、というくらい。

──保護犬を引き取ることに、不安や心配はありませんでしたか?

成犬から飼うとなると、本来もっている性格や性質がわからないのが少し心配でした。年を重ねたときに対処ができるかな……と。というのも、犬も介護が必要になるケースがあるんですが、うちにいた先住犬たちは認知症になったんですね。そのとき強く出たんです、元気で意識がはっきりしていたときにはわからなかった “本性”みたいなものが。

権勢欲の強かった柴MIXの方は、おとなしく、かわいいおばあちゃんになったんですが、逆におとなしくてフレンドリーだった甲斐MIXの子が、幻覚を見てたのか攻撃的になり、何もないところに襲いかかるようになって、フードアグレッシブ(食に対して執着する)になったんです。子供のころには見えていたけど、大人になって、なりを潜めていた生来の性質が出るのを体験したので、次に来る子はどうなのかなと。
それに高齢になると、病気などで毎月ある程度の医療費もかかります。それらについては、夫婦間で厳しく何度も話し合いましたね。

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──ココちゃんと貯蔵ちゃんは14歳と9歳のシニアと呼ばれる年齢ですが、そのあたりはどう考えていましたか? 飼うなら長く一緒にいられる子犬を希望する方も多いと思うのですが。

私はちょっとあったかな。またすぐお別れがきちゃうのかなって考えたこと。でも老犬だからという理由で引き取らないってほどじゃない。夫と子供たちもそうでしたね。昨年看取った2匹の、上の子(柴MIX)の世話を誰よりもしていた娘も、「もう一度介護がしたい」と言っていたくらい。みんな老犬を引き取ることに対してポジティブでした。

──犬の年齢よりも、自分たちとのフィーリングが重要ということでしょうか?

そうですね。結局、ココと貯蔵に決めたのも会ってみてからですし、譲渡会に行って考えが変わりました。あと犬について思ったのは、個体差があるので年齢だけでは判断できないっていうこと。先住犬たちが12歳くらいだったときよりも、ココと貯蔵の方が若いですね。

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サバイバル能力を身につけた、拾い食いが当たり前の貯蔵

──晴れてココちゃんと貯蔵ちゃんを引き取り、2匹が関さんのうちに来ました。はじめはどんな様子でしたか?

うちに来て2週間はお互いに緊張。貯蔵はみんなに「好きすきー」って近寄っていくフレンドリーな子なので、犬が苦手なココは我慢してたみたい。慣れてきたら、ココは貯蔵に「来るんじゃないよ!」って怒るようになりましたから(笑)。

──おとなしい顔して、厳しい一面がありますね。

そうなんですよ。それで2匹の預かりボランティアさんに相談したんです。ココを預かっていたマナさんは、「2匹でいると楽しいんだって思えるように、一緒にいるときにオヤツをあげてみたら?」と。でも貯蔵の預かりさんは「貯蔵は目の前に食べ物があると人格が変わってしまうから、逆効果かも。他に素敵なことで何か探してみるのはどうかな?」と教えてくれました。

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──貯蔵ちゃんはそんなに食い意地が張っているんですか?

外を放浪中にサバイバル能力を身につけたと推測しているんですが、干からびたミミズとか、トカゲ、地面にこびり付いているガムもかじっちゃうんです。家の中でもポトンと何かが落ちると、一目散に飛んでくる。室内ならまだ防げますが、外での拾い食いは命に関わるので細心の注意を払っています。道端や植え込みに毒性のある殺鼠剤がまかれていることもありますから。

──ところで、ずっと気になっていたんですが、貯蔵ちゃんの名前の由来は?

もともとは保健センターで「柴じい」と呼ばれていたみたい。それをミグノンの友森さんが引き出したときに「キミは(センターに1年間も)貯蔵されていたから、今日から貯蔵ね」と命名したそうです。ココはセンターで「しばあちゃん」だったのが、家に来る前の預かり宅で「ココ」になりました。
貯蔵もココも、本当の名前はあると思いますが、うちに来る時点でつけられていた名前にもさまざまな経緯が凝縮されているので、名前ごと引き取ろうって決めてたんです。

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影からジーっと見るのが得意技!?

──関さんのうちに来て約3か月。2匹に何か変化はありましたか?

2匹とも今いるここが自分の家なんだって思うようになってきているみたい。お散歩の帰り間際、うちに近づいてくると早歩きになるんです。それに私たちのことを“家族”だと認識してきているのか、先日、私と娘で2週間の旅行をして帰宅したら、「帰ってきたー!!」って喜んでいました。

──健康面で気をつけている事はありますか?

2匹ともシニア用のドライフードをあげています。ココは便が安定して、身体を痒がらなくなったし、貯蔵もお腹の痒みが減って体重も落ち着いてきました。あと貯蔵は心臓が悪いから、走ることや、急激な運動は避けているんです。2匹ともシニアなので運動負荷をかけないように、ゆっくりと長めのお散歩に。とはいえ、とても元気ですよ。

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──さきほどみんなでお散歩をしたときも、ココちゃんが水たまりをぴょんっと飛び越えていました。

けっこう身軽なんですよ。ココは耳が聞こえないと言われていたけど、扉の開閉のカチャンというような振動音はわかるみたい。ただ声は聞こえないようで、名前を呼んでも反応はないですね。

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──関さんから見て、ココちゃんと貯蔵ちゃんの性格、それと可愛いさはどんなところでしょうか。

それぞれタイプが違うんです。ココは意外と気が強くてマイペースなんだけど、すごく甘えん坊の淋しがりやさん。こちらにぴったりくっついてくるし、抱っこしてあげると安心するみたいです。耳が聞こえないから、いつも周囲の動きをじっと目で追っているんですが、それだけじゃなくて自分の興味のあることも影からじーっと見てる “じっとり系”なんです。そこがおもしろいところでもあるし、可愛いですね。

貯蔵はフレンドリーでわかりやすく可愛いです。尻尾を振って好きだよって愛情表現をしてくれるし、誰でも受け入れてくれる、気立てのいいおじさん犬。でもただの愛想良しじゃなく、家族以外に警戒吠えをするようにもなった“やる時はやる男”なんです。眠くなると毛布を振り回したり寝ぐずりをする、赤ちゃんみたいなところもありますね。

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──本当に性格が全然違うんですね。もし2匹を“人間”に例えるとしたら、どんなタイプだと思いますか?

職業で言うなら、貯蔵はフリーランサーでしょうね。社交的だから。だけど報酬(たべもの)はきっちり貰いますってかんじ(笑)。ココは人事とか総務とかのOLさん。最初は様子を伺っていたけど慣れてきて本性が出てきた、人や物事に厳しめの女子、ですかね(笑)。

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私たちの生活にはムダが必要だったと気づかせてくれた

──関さんにとって“犬と暮らすこと”とは?

犬のいない生活は味わいがない……。旨味、ダシがないって感じです(笑)。やっぱり私は犬がいる生活が好き。それから、あらためて私たち人間の暮らしには“ムダ”が必要だったと気づかせてくれたのも犬の存在ですね。

──それはどういうことですか?

先住犬が亡くなり半年経ったとき、ひとつ思ったんですね。犬のいない生活は“合理的”なんだなと。抜け毛も落ちてない、お散歩も行かなくていい、毎日の餌の心配もない。犬がいないとラクであると同時に、私たちの生活自体も、いつの間にかムダのない方へ傾いていたんです。

というのは、人間だけの生活になると、どうしても“会話をして理解しあうべき”と思い込みがちで、特に子供たちが成長してきた今は、話してなんとかしようと、皆が思うようになっていて。それはそれで良いところもあるんですが、そのぶん言葉や感情がぶつかってお互い疲れてしまうこともあった。そんなときに言葉や理屈にならずにこぼれ落ちる“意識のゴミ”みたいなものが、行き場を失って溜まっていたんです。

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──生活がスマートになる一方で、マイナス面もあったんですね。

その意識のゴミを中和して、自然に吸収してくれたのが犬の存在だったんです。犬たちは意識していないだろうけど、ココと貯蔵が来たおかげで、理屈で物事を考えていた私たちに“言語や論理に依存しすぎちゃいけない”、“人間も動物なんだ”っていうことを、自然に思い出させてくれました。

──最後に、ココちゃんと貯蔵ちゃんが来てから、家族に変化はありましたか?

自然に笑うことが増えましたね。彼らが特別何かをしてくれるわけじゃないんだけど、通じ合い、感じ合い、支えになってくれている。犬ってやっぱり、そこにいてくれるだけでいいですね。

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DOG’S PROFILE
ココ(メス/推定2001年生まれ)
貯蔵(オス/推定2006年生まれ)

OWNER’S PROFILE
関 康弘さん・有美さん
世田谷区在住。うてな(中2)、禾楠(小5)の4人家族。2014年5月に柴MIXの凡(17歳)と、11月に甲斐MIXのムーチョ(14歳)を看取り、この時に介護経験から子供たちがシニア犬を希望。2015年の今年、うてなはドイツの「ティアハイム・ベルリン」、禾楠は東京都「動物愛護相談センター」を訪れ、ますます保護犬好きに。

▼ココちゃんが預かりボランティア宅にいたころの様子はこちら
「インタビューVol.3 小林マナさんとギルバート、ジョージ、マロン、ココ



interview, edit Tomoko Komiyama / photo Jun Takahashi / translation Chiyoko Kimura

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