CAT / DOG / INTERVIEW / RESCUEJun 11, 2015

料理研究家 桑原奈津子さんとキップル、クロ、小鉄

台風一過の青空が広がる日。晴れて良かったですねと笑顔で出迎えてくれたのは、雑誌や書籍で活躍する料理研究家の桑原奈津子さん。保護犬の存在と雑種犬の魅力を広めるために始めた自身のツイッターが人気を博し「パンといっぴき」「パンといっぴき 2」(バイインターナショナル)という著書も手がけました。

そんな彼女と暮らすのは、白い犬のキップルちゃんと、黒猫のクロちゃん、白黒ハチワレ模様の猫小鉄ちゃん。突然の来客に隠れてしまったクロちゃんと、少しだけ私たちに興味を示してくれた残りの2匹。子供のころから動物と暮らしたいと願っていた桑原さんに、今のその暮らしについて伺うと、穏やかに、優しい口調で語ってくれました。


int006_015

人気のない雑種犬。

――桑原さんのうちには犬が1匹、猫が2匹いますが、最初に飼い始めたのはどの子ですか?

犬のキップルで、9年位前(2006年)に飼い始めました。今の一戸建てに引っ越すタイミングで、犬が飼える環境になったのでウェブサイトの「いつでも里親募集中」で探したんです。

――飼い主のいない犬と猫の里親を探すサイトですか?

はい。そのサイトにはボランティア団体や個人が、里親を探している犬や猫を地域ごとに分けて掲載しているんです。キップルは沖縄の団体が関東地域のページに載せていて。沖縄生まれの雑種なんです。

int006_010c

――桑原さんが犬を探したときの条件や希望は何かあったのでしょうか。

大きさだけは抱えられるくらいを基準にしていました。というのも私たち夫婦が車を持っていないので。それ以外は色も形も気にせず。あと”雑種”というのも決めていました。

――なぜ雑種がいいと思っていたのですか?

里親募集の犬の中でも、雑種の成犬がいちばん人気がないと聞いていたからなんです。私は犬種へのこだわりはなかったので、いちばん貰われにくい雑種にしようと。結局、成犬じゃなくて生後3ヶ月半のキップルが気になっちゃったのですが。

――決め手は何だったのでしょうか。

雰囲気です。醸し出す雰囲気がなにこの子っ!?って感じで独特でした。生後3ヶ月半なのにどこか宇宙人ぽく、変わっていて(笑)。いわゆる典型的な”かわいい”ではなくて、私たちにとってのかわいさがあったんです。

int006_002
int006_009

――桑原さんは今まで犬を飼った経験があったのですか?

はい。私が中学校1年生のころ、実家で飼っていました。私は物心がついたときから、犬が大好きで、ずーっと犬と暮らしたいと思っていたんです。でも転勤の多い親だったので飼うことができず、中1のときに初めて。

――キップルは桑原さんにとって2代目というわけですね。以前はどんな種類の犬を飼われていたのですか?

黒い柴犬です。犬を飼うことになったとき母親は「保健所から貰うのがいいんじゃない?」と私に言っていたんですが、柴犬専門のブリーダーから貰ったんです。当時は常に保健所に犬がいるわけではなく、子供だった私もすごく急いで欲しがってしまったものだから。そのときの母の言葉が、大人になってからもずっと心に残っていました。

int006_018

庭に遊びにきた野良猫のクロ。

――それで里親募集サイトで探されたんですね。次に猫のクロが加わります。

クロはある日、庭に現れるようになったんです。気になってはいたんですが、そのときうちにはキップルより前から飼っていたオカメインコがいて。鳥と猫の同居は難しいだろうと考えて、数ヶ月はクロが来たらおやつをあげる、という距離感で見守っていました。

――クロはもともと野良猫だったんですね。

はい。この近辺って野良猫が多いんですよ。でも、たまに見かける子がある日裏庭で死んでしまっているのを見つけたりもしていて。外猫の生活が厳しいことはわかっていたので、クロを冬になる前に保護したんです。たとえ我が家で飼えなくても、飼い主を探そうと思って。

int006_033

――飼い主探しはいかがだったのですか?

いざ家に入れてみたら、クロは警戒心がとても強く、私が触れるようになるまで4ヶ月半もかかったんですよ。あまりにも人に慣れない猫なので、飼い主探しは難しいかなと感じました。それでそのままうちで飼うことにしたんです。だいたい5年前なので2010年ころ。動物病院の診察によると、保護したときのクロは生後10ヶ月くらいでした。

――鳥と猫の関係は大丈夫だったのでしょうか。

インコは、クロを保護してしばらくして寿命で死んでしまったんです。それ以来、クロも自由に部屋をうろうろするようになりました。

――突然、猫のクロが来て、キップルはどんな様子でしたか?

キップルはもともと猫好きで、お散歩中に猫を見かけても「遊びたいな!」というくらいに。だからクロに対しても友好的でした。でもクロはキップルが遊ぼうって誘ってもシャー!って威嚇。キップルは何度も引っ掻かかれ、鼻から血が出てしまったことも。そのたびに私がクロを怒っていたんです。

それなのにキップルは相変わらずしっぽを振ってて。その様子を見て、そんなに心配しなくてもいいのかなと思ったんです。しばらくしたらクロも慣れてくれて、キップルを引っ掻かなくなったし、2匹もなんとなく調整できるようになりました。

int006_040
int006_012

2匹目の子猫はいつのまにか7キロに。

――犬と野良猫も時間が経つと仲良くなるんですね。その後にやってきた2匹目の猫、小鉄はどんなきっかけで飼うことになったんですか?

前から私は「子猫を飼ってみたいなあ」と思っていたんです。ただ、夫はそう思っていないようだったので、話す機会もなくて。そんなある日、夫の知り合いの家に子猫が現れるようになって。それを聞いた夫が「猫? 猫!? 飼うの〜?」なんて言って、意外とその気になっちゃったんです。私は内心やったー!! と(笑)。

――トントン拍子に子猫を飼うことが決まっていくのですね。

いやそれが、実際はその一件のあとなんです。その子猫は、私たちが里親に立候補しようか迷っているうちに飼い主が決まっちゃったので。小鉄が来たのはそのあと、夫の”子猫飼いたい熱”が冷めないうちに、私が再び里親募集サイトで子猫を探したからなんです。お気に入りの子を見つけては、夫に見せながら相談していましたね。

int006_013

――桑原さんが作戦に出たわけですね。子猫と限定していた理由は何かあるのですか?

キップルもクロも何となく夫に懐いていなくて、子猫ならと思ったので。あと2匹ともメスだから、オスが良かったんです。うちがたまたまなのか、メスってオスに比べてマイペースで気まぐれ。キップルに関しては夫のことを同等だと思っている節もあります(笑)。

それもこれも、夫がキップルのことを可愛いがりすぎていることが原因なんですけどね。キップルのことが気になって気になって、自分が触りたいときにいつでも触るものだから嫌がられて、逃げられちゃったりしていたんです。クロに関しては全然触れません。だから次に猫を飼うなら、子猫でオスがいいんじゃないかって。

int006_014

――小鉄の子猫のときの写真が、桑原さんの書籍「パンといっぴき2」の中にありました。小さくて毛もモサモサしていましたね。

あの写真は生後1ヶ月半のときです。800グラムでした。

――こんなに大きくなるとは……。

本当に! 小鉄は今7キロですよ。離乳するまで母乳を飲んでいたから栄養状態が良かったんでしょうね。犬のキップルは10キロです。今日は姿を現さないクロも大きいって言われます。

int006_041

3匹のボスは犬のキップル!?

――3匹はどんな性格ですか?

キップルとクロはマイペースです。クロを飼うまで、キップルのことを「猫っぽい犬だな」って思っていたんです。すごくマイペースで、独立心も強く、留守番も平気ですし。

でもクロが来てみたら、キップルよりずっと猫っぽかった(笑)。クロは猫を飼ったことのない人がイメージするような、典型的な猫の性格です。気まぐれで甘えたいときだけ来るような。3匹目の小鉄は人見知りをしませんね。そして念願のオスだけど、意外と甘えん坊じゃありませんでした。

int006_039

――3匹が一緒になって寝たり遊んだりしますか?

近くにいることはありますが、一緒に寝たりは全然しません。私が思うに3匹の関係性は一番若い小鉄はキップルのことをボスだと思っているみたいで、ちょっと媚びますね。すりすりーって。クロのことは同等、キップルのことは先輩!ってところでしょうか。クロはいまだにキップルのことを怒ることがあるので、キップルは小鉄と仲が良くて、追いかけっこをしたいときは、小鉄をけしかけて遊んでいます。

int006_soukanz

――緊張しているせいか、今日のキップルは追いかけっこをするタイプに見えませんが……。

けっこう賑やかですよ。あと今はしないけど、小鉄は家の中の柱に登っていたので、柱はボロボロ。すごく上の方まで傷があるんです。

int006_027

――それぞれの苦手なことはありますか?

キップルはいろいろあって、雷とか雨、お風呂……。基本的に怖がりで洗われるのも病院の診察の時も震えています。小鉄は大きい音と、あと撫でられるのがあまり得意じゃないんです。膝には乗ってくるのに。クロは人間が苦手ですね。

――クロは警戒心が強いんですね。逆に3匹が好きな物を教えてください。

クロは猫草が大好きで見せるだけでニャーニャー鳴いて欲しがります。ビックリするくらい食べるんですよ。キップルはおやつが好き。おやつは小鉄も欲しがるので、猫も食べられる無添加のささみを干したものなど、シンプルにしています。

int006_023
int006_044c

――食べることが好きなんですね。ちなみにパンは……?

あ! パンも好きです(笑)。本当に毎日寄ってきます。勝手に。

――桑原さんのツイートのパンとキップル(たまに小鉄も登場する)の写真は、パンの匂いに吸い寄せられて来ていたのですね。ほかにも好きなことはありますか?

みんなよく寝てますね。いつも心地のいいところを求めて、冬は2階、気温が高くなってくると1階の涼しい所で。

int006_034
int006_025
int006_001

――お散歩が好きな犬が多いのですが、キップルはどうですか?

うーん……。好きだけど、1日3回行くからありがたみがないのかな。雨の日も台風の日も毎日欠かさず行くんです。

――台風の日も行くんですか?

キップルはどうしても外じゃないと、おしっこをしてくれなくて。私が傘をさしてキップルを抱きかかえて、ちょっと離れたところへ連れて行き、ささっと。濡れるのは嫌がるので、小降りになるのを待ってレインコートを着せています。でも帽子を被せると一歩も動かなくなっちゃう(笑)。

――お散歩中も意思表示がハッキリしていました。

頑固なんです。自分のタイミングや行きたい方向があるらしく。それなのにキップルは好きな人に会っても、犬に会ってもしっぽを振らない。感情表現がいまいち複雑な子のようですね。

int006_007

いるだけで楽しい。1日3回のお散歩も平気です。

――3匹の名前の由来についてお聞きしたいのですが、キップルって珍しい名前ですね。

夫が付けたんですが、ミュージシャンであり、デザイナーでもある立花ハジメさんのアルバムタイトルに「テッキー君とキップルちゃん」というものがあって。以前うちにいたオカメインコがテッキーだったので、次に来た犬ってことでキップルに。もっと簡単な名前にすれば良かったなあ。

――お散歩中、飼い主さん同士が、お互いの犬の名前を聞いたりしますよね。

聞き間違えも多いですよ。リップルとか、ピップルとか。さらに名前の由来を聞かれた時もちょっと変な空気が流れますね。

――打って変わってクロ。やっぱり黒猫だからですか?

はい、適当に付けて結局そのままです。もともと飼い主を探すつもりで保護したので。
私が以前飼っていた黒柴も、小1のときに少し飼っていたパンダうさぎも(白黒模様のうさぎ)、庭に遊びにきていた別の猫もみんなクロって呼んでました。単純にクロってつけることが多かったで同様に。唯一私が名前を付けました。

int006_020

――1番若手の小鉄は和風な名前ですね。

漫画「じゃりン子チエ」に登場する猫の名前からです。漫画の小鉄も模様がハチワレで、額の三日月状の傷がトレードマークっていうケンカがすっごく強い猫。うちの小鉄はケンカはしませんが、こんなに大きく立派になりました(笑)。

――名前や性格も三者三様ですね。

そうですね。いるだけで楽しいです。子供の頃から動物に囲まれて暮らしたかったので、それが叶って安心しています。それまではずっと落ち着かなかったんです。3匹も飼っていて大変だと思う方もいますが、暮らしているだけで幸せ。寝ている姿を見るのも好きだし、毎日3回のお散歩も平気です。

int006_021

――桑原さんの夢見た暮らしが実現しているのですね。では逆に何か困っていることなどありますか?

強いて言えばキップルが人懐っこくなくて、他所に預けられないところですかね。家以外だと、寝ないし食べなくなっちゃう。そのことがわかっているので心配で、泊まれて一泊。8年間一度も長期で預けたことはありません。もともと夫婦共に旅行好きではないので、特別困ることはないですね。



int006_031

雑種の魅力を伝えたくてできた「パンといっぴき」。

――桑原さんのツイートから始まった「パンといっぴき」。ツイッターも人気で書籍にもなっています。あのツイッターを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

保護犬の存在や雑種の魅力を伝えられることをしようと思ったのがきっかけです。捨てられてしまう犬がいたり、里親募集でも雑種が残ってしまうことに対して、どうにかできないかなとずっと考えていました。それで、アカウントはつくっていたけれど、何もツイートしていなかったツイッターで発信してみようと思ったんです。

――キップルとパンの写真をツイートするようになったのはいつからですか?

4年前です。最初にツイートした1枚目に、ちょっと反響があって。喜んでもらえるのかな? と。どうせならみんなが楽しいほうがいいし、私もこのくらいならできるかなって。

int006_028

int006_036



――写真に癒されている人も多いと思います。

そうだと嬉しいですね。写真を撮ることも、動物も、食べることも、私が子供の頃から好きだったことなので続けられています。

――雑種の魅力はどういうところに感じますか?

一匹いっぴきが違うところ。柴犬や日本犬も好きなんですが、雑種って自然な犬の形というか、なりたくてなったカタチをしているなと思うんです。キップルも全然病気をしていないところを見ると、身体も丈夫なようですし。猫たちもみんな雑種です。

int006_029
int006_042

――子供のころに夢見た”動物と一緒に暮らす”こと。実際に犬と猫との暮らしはいかがですか?

楽しいです。ついつい犬や猫たちに目が行ってしまいます。3匹いるとそれぞれの関係性ができているので、それを見るのものまたいい。キップルだけだったときは、もうキップルに気持ちがいきすぎて、ああこんなに愛しすぎて大丈夫なのか、こんなに好きすぎてやばいかもって(笑)。

それで犬をもう一匹飼おうかと思った時期もあるんですが、家や自分たちの環境を考えて猫にしたんです。実際猫2匹が来てみて、うちには良かったなあって。愛情分散というわけではないんですが、3匹いるのが本当にちょうどいいんです。

――愛情深く、でも手を焼きすぎない、人も犬も猫もそれぞれが心地いい暮らしをしているように感じました。今日はありがとうございました。


DOG’S AND CAT’S PROFILE
キップル(雑種犬 雌 推定2007年生まれ)
クロ(黒猫 雌 推定2010年生まれ)
小鉄(白黒の猫 雄 推定2013年生まれ)

OWNER’S PROFILE
桑原奈津子(くわはらなつこ)さん/料理研究家
カフェのキッチンとベーカリー、製粉会社の開発室を経て独立。雑誌や書籍へのレシピ提供を中心に活動中。
著書に「しっとりとふかふか 生地がおいしいパンケーキ」(家の光協会)、「かんたん手作りグラノーラとミューズリー」(主婦の友社)等のレシピ本の他、Twitterにアップしている朝食と犬の写真をまとめた「パンといっぴき」「パンといっぴき2」(パイインターナショナル)がある。 Twitter:https://twitter.com/kwhr725


パンといっぴき 定価:¥1,296


パンといっぴき 2 定価:¥1,296


Bread and a Dog 参考価格:¥1,763


interview, edit Tomoko Komiyama
photo Jun Takahashi
translation Chiyoko Kimura

Pocket

Posted in CAT, DOG, INTERVIEW, RESCUENo Comments » 

関連記事